2016..8月更新
RSウィルス感染症(respiratory syncytial virus infection)について |
1. 病態 |
RSウイルスは気道感染症の原因の1つであり、9月から4月ごろにかけて多く発生しますが、最近は夏場にも感染が確認されています。 乳児の50%が1歳までに、2歳までにほぼ100%感染し、その後も再感染を繰り返します。 3~5日の潜伏期間を経て、鼻水、咳、発熱等の風邪症状に続き喘鳴、多呼吸、チアノーゼ、無呼吸発作等を認め、8~14日ほどで症状は終息します。1歳以下では中耳炎を合併しやすくなります。 初めて感染した場合は重くなりやすく、乳期、特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。そのため、特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)のお子さんがいらっしゃる場合には、感染を避けるための注意が必要です。 |
2. 感染経路 |
くしゃみ、咳による「飛沫感染」、呼吸器からの分泌物に汚染された物品を介した「接触感染」があります。 |
3. 診断と治療 |
・診断 鼻腔粘膜からの迅速診断キットが短時間での診断が可能です。他にウイルス分離、血清学的診断、遺伝子学的検査等があります。 (※迅速診断キットの医療保険適応対象は「入院」のみです) ・治療 特効薬はなく対処療法が中心となります。症状によって抗生剤、去痰薬、β2刺激薬等の気管支拡張剤を使用します。症状が重い場合はステロイド投与、輸液療法、酸素投与を行います。 |
4.予防 |
RSウイルスはヒトが唯一の感染源であり環境表面では数時間、ヒトの手で30分以上生存します。保育所等、施設内流行を起こし易いため 感染者との接触を避けることが予防につながります。 ・タオルや洗面器、食器等の共用を避ける ・飛沫・接触により感染するためマスクの着用、手指の洗浄の励行 ・ドアノブ、手すり等、アルコールによる消毒を実施する。 (RSウイルスエンベロープを持つウイルスであり次亜塩素酸、アルコール等で容易に感染力を失う) ※シナジス筋注液について 抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体(シナジス)が予防投与で認められています。ただし保険適用には以下の条件があります。 1.母親のお腹の中にいた時期が28週以下の場合 ⇒ RSウイルス感染流行開始時に生後12か月以下の新生児および乳児 2.母親のお腹の中にいた時期が29~35週以下の場合 ⇒ RSウイルス感染流行開始時に生後6か月以下の新生児および乳児 3.過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けたことがありRSウイルス流行開始時に生後24か月以下の新生児、乳児および幼児 4.血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)を持ちRSウイルス流行開始時に生後24か月以下の新生児、乳児および幼児 5.免疫不全があり、RSウイルス流行開始時に生後24か月以下の新生児、乳児および幼児 6.ダウン症候群があり、RSウイルス流行開始時に生後24か月以下の新生児、乳児および幼児 。 |
5.登園の目安 |
呼吸器症状が消失し、全身状態が良いことが認められた場合、可能になります。 |