2016.8月更新
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)について |
解説 |
【病原体】 原因であるムンプスウイルスはパラミクソウイルス科のウイルスです。 【臨床症状】 臨床経過は軽症と考えられています。2~3週間の潜伏期(平均18 日前後)を経て、唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症し、通常1 ~2週間で軽快します。 唾液腺腫脹は両側、あるいは片側の耳下腺にみられることがほとんどですが、顎下腺、舌下腺にも起こることがあり、通常48時間以内にピークを認めます。 接触、あるいは飛沫感染で伝搬しますが、その感染力はかなり強いです。ただし、感染しても症状が現れない不顕性感染もかなりみられ、30~35%とされています。 最も多い合併症は髄膜炎で、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合があります。 【治療・予防】 流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法であり、発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行います、髄膜炎合併例に対しては安静に努め、脱水などがみられる症例では輸液の適応となります。 効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法です。有効性については、接種後の罹患調査にて、接種者での罹患は1 ~3%程度であったとする報告があります。概ね90%前後が有効なレベルの抗体を獲得するとされています。 ワクチンの副反応としては、接種後2週間前後に軽度の耳下腺腫脹と微熱がみられることが数%あります。 集団生活に入る前にワクチンで予防して おくことが、現在取り得る最も有効な感染予防法です。 感染症法における取り扱い(2012年7月更新) 「流行性耳下腺炎」は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関は週毎に保健所に届け出なければなりません。 学校保健安全法における取り扱い(2012年3月30日現在) 「流行性耳下腺炎」は第2種の感染症に定められており、耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされています。 |
家庭での注意点 |
食べ物:すっぱいものや固いもの、塩辛いものを避けます 入浴 :高熱や強い痛みがなければ可能です |
鑑別すべき疾患 |
初期症状が判別しにくいものとして反復性耳下腺炎と化膿性耳下腺炎があります 反復性耳下腺炎は 原因として、アレルギーや感染,まれにシェーグレン症候群があるが特別な治療はなく対症療法となっています 特徴として 1)片方だけ腫れる 2)熱は出ない 3)痛みは軽く、2~3日で治る 4)他人にはうつらない 5)何度も繰り返す ほとんどが学童期にて自然に治癒します 化膿性耳下腺炎は 原因として、口中の細菌が唾液腺導管から耳下腺に入り込んでおこる急性の化膿症です 症状として、耳下腺部が腫れるため熱感、圧痛があり発熱や頭痛などを伴います 治療は抗生剤、鎮痛薬の投与、ひどい場合は切開排膿をおこないます |
(参考:国立感染症研究所感染症情報センター、厚生労働省、welqココロとカラダの教科書) |
疫学四方山話 |
流行性耳下腺炎は、5世紀にヒポクラテスがThasus島で、耳の近くが両側あるいは片側のみ腫脹する病気が流行したのを記載したのが最初であり、耳周辺の痛みを伴うこと、睾丸が腫脹することも記載されています。ムンプスという名前の由来は不明ですが、ひどい耳下腺炎を起こした患者がボソボソ話す(mumbling
speech)ことによるのではないか、と報告されています。 【参考】 国立感染症研究所より 【文献】Cherry J.D.Mumps virus.In:Textbook of pediatric infectious diseases (ed by Ralph D. Feigin, James D. Cherry, 1998; pp2075‐2083, W.B.Saunders Company, USA. |